BL小説  おやすみなさい、また明日 (キャラ文庫)



表紙に誘われるが如く、素晴らしいストーリーです、これは。

「素晴らしい」といっても、アップダウンがあるとか、すごいことが起こって……という素晴らしさじゃないです。

恋愛ですごく左右されるような話でもない。

主人公二人のお互いへの愛とか想いというものが、本全体を覆っていて、言葉で書かれていなくても雰囲気がそれを伝えてくれる……そんな一冊でした。


おやすみなさい、また明日 (キャラ文庫)おやすみなさい、また明日 (キャラ文庫)
(2014/01/25)
凪良 ゆう

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主人公は、10年越しの同棲彼氏と別れた売れない作家つぐみと、つぐみの引っ越し先の大家(実際には大家の息子)で元エリートサラリーマンの朔太郎。

朔太郎は事故で、以前のことを覚えていないという健忘症を患っています。

忘れてしまうことが怖い。
相手のことが好きなのに、相手との会話も忘れてしまうかもしれない。

そんな設定、わりと有りがちなんですが、この本はそのありがちさがないです。
もっと良い意味で病気と日常がコンパクトにおさまっていて、大げさじゃないところがさすが凪良作品だなと思います。

最初は友達関係から始まり、お互いにしっくりくる相手となり、そして好きという感情が芽生えるけれど、健忘症の自分は相手のことを忘れてしまうかもしれない。
それで嫌な思いをさせてしまうかもしれない。その恐怖からつぐみへの気持ちを諦めてしまおうとする朔太郎。
そしてそんな朔太郎に詰め寄るでもなく、彼の気持ちを尊重して遠くから好きでいつづけるつぐみ。

前半は友達以上恋人未満な関係で少し楽しい雰囲気で展開しながら(脇キャラも非常に個性的で面白いです)、後半は離れ離れになった後の二人をパラレルに描いていて、その雰囲気の違いにも惹きつけられました。

主には心情メインなので、丁寧で繊細な気持ちの移り変わりや葛藤が楽しめる作品ともいえると思います。

何気ない描写も光っていましたし、なによりふと描かれている二人の気持ちがあまりに自分たちの周りにも転がっていそうな一言だったりして、身近な共感がありました。

そして一番心に残ったのは、実は巻末のショート。

作者もあとがきで「BL的に途中までにしておいたほうがよいのでは」と担当さんからもアドバイスをいただいたのですが……と書かれておられます。
そう、このショートにはかなり先の未来の話が書かれています。
かなり先、もう爺さんになって……と、たしかにBL的にはあまり描かれない場面までばっちりと。

これは好き嫌いが出るショートだなと読んでて思いました。
BLは空想世界を描いてなんぼの世界。
現実めいたところは避けるのが王道です。

が、このショートがあるからこそ、この本の印象がぐんと強くなったのも事実です。 ショートを読むことで、二人の愛、ずっと続いてきた愛がどれだけ平凡かもしれないけど幸せな日々の連続だったかを改めて読者が思い知ることができるのです。

実際、私も本編を読んだ後は、「まあハッピーエンドでよかったね!」ぐらいでした。

が、このショートを読んだら、全く本編の印象も変わってしまいました。
本編では出なかった涙も、このショートではボロボロ出てきました(笑)
それぐらい、このショートで「続く愛」が描かれていて、大変オススメです。



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