二月病 (Holly NOVELS)



とても不思議な本でした。
内容はわかりづらいことはないんですが、設定がすごく不思議でした。

なので最初、ちょっととっつきにくい感じをうけるかもしれません。
そして結果、あまり好きじゃなかったという感想も出る可能性のある本だと思います。

かくいう私も、購入後かな~りの長い間、放置しておりました(汗)


二月病 (Holly NOVELS)二月病 (Holly NOVELS)
(2012/02/18)
尾上 与一

商品詳細を見る





ストーリーは結構シンプルです。
両親を殺されて監禁された蒼司と、彼を助けるために鉄塔のボルトを抜き続ける千夏。
いつも一緒にいて、お遍路をやったりと親友だった2人。
それが蒼司が監禁されて、初めて千夏は蒼司が自分を恋愛対象として見ていたことを知る。
監禁先の窓越しに蒼司に触れるうち、次第に千夏は自分の中の恋愛感情を自覚する。
そしてお互いがお互いを守ろうと必死になる。

お遍路、四国、ボルト、ご朱印帳。
これらがキーワード。

どうやら本当にあった事件を題材にしたようです。
とはいえ、事件自体はかなりあいまいで、犯人像も割とぼんやりしています。

焦点は事件や犯人じゃなく「事件によって自覚した恋」とでもいうがごとく、事件のこと自体はあまり掘り下げられていません。
そこにぼやけた納得のいかなさを感じる読者もいるかなと思いました。

実際私も「なんで事件を題材にしてるんだろう?」って思いましたし。

ただ、タイトルにある「二月病」の状況を作りたいがために事件にしたのか?と思ったり。
今も読解力のない私には、実際のところどうなのか、わからないままです。

最後には2人は平たくいう「逃避行」となり、事件はあいまいとなっていきます。
じゃあどこがクライマックスだったのか
やっぱり読んだ後もよくわかりませんでした。

ただ、よくわからない中に、不思議と伝わってくるなにかがあります。
それが「お互いへの深い愛情」……なのだとしたら、これがこの本全てで言いたいことなのかも。

もう一つこの本で目立っていたのは、脇役の若田。

元新聞記者で、千夏と知り合い、彼の行動を援護する大人、そしてこのストーリーの傍観者の役どころ。
むしろ彼が主役でもいいんじゃないか?ぐらいメインとして登場。

彼の過去の回顧録のような形で物語はできています。
この人が物語にかむことにより、高校生2人の非現実的なストーリーが現実となり、2人の現在がぼやんと見えてくる。
若田を作り上げた作者は、うまいなと思いました。

この若田がいないと、話が進まない。
この若田がいないと、話が終わらない。
この若田がいないと、話が始まらない。
なんでも若田が必要。

結局「二月病」というタイトル、これは何を意味するのか?

千夏の中に生まれた恋心を指すのか。
吊り橋効果のように、窮地に陥ったから生まれた恋愛感情を指すのか。
これは二月病という病気なのか?

読んだ後も、これの明確な答えがない。
事件にかかわった若田自身の病気なのか。
最後の一文にそうにおわせるものがあります。

じゃあ若田が主役じゃん!?

まあまあ。

そのあたりも読み手によって、いろいろかわってくるのでしょう。
なんて想像の余白が多い作品!

現実的ストーリーがお好みの読者だとちょっと引いてしまうかもしれません、この本。
私も現実的な方が好きなタイプです。
でも、個人的には悪くなかったと思います。
ただ、大衆向けではないだけ。

凛とした、刺すような雰囲気の中にほわっとした温かさを感じる本でした。



関連記事
テーマ: BL小説 | ジャンル: 小説・文学
BL小説  碧のかたみ (Holly NOVELS) | Home | BL小説  家計簿課長と日記王子 (二見書房 シャレード文庫)

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する