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彼は死者の声を聞く (ショコラ文庫)



3月に買ってから長いこと放置していました。
なんか内容暗そうだな、と思って(笑)

読んでみたら、やっぱり………
でも、これはすごい!
なんという重厚感
ありえないぐらいの読み応えでした。


彼は死者の声を聞く (ショコラ文庫)彼は死者の声を聞く (ショコラ文庫)
(2013/03/09)
佐田 三季

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まず、分厚い!
かなり重厚感がある。

そして題材も重いし、複雑だし、暗い。
明るい軽い部分がない。

その分、読み応えはありました。

巻末の後日ストーリー「restart」がなければ、読んでいる最中に心の中に育ってしまった居心地悪さが解消できなかったはず。

それだけタイトル作品(本編)はずっとなんか不安めいたもの、すっきりしないもやもやしたものを感じながら読んでいました。
つまり、それだけ内容が重くて複雑な感情を描いていたのだと思います。

ストーリーは、主人公の懺悔と才能への嫉妬を主軸にした展開。
自分にない才能を持つ隣人、そして双子の姉への嫉妬。
その双子の姉の死に対する自分の責任の自覚と懺悔。

著者もあとがきで書かれていましたが、「映画アマデウスのサリエリのようにして……」
まさにその通り。
主人公斎木はサリエリのようでした。

知能遅れの姉の持つ才能、隣人の子供神成の持つ才能に嫉妬する自分。
嫉妬するからこそ相手をバカにしなければ保っていられない自分のプライド。
でもその才能を羨望してしまう自分自身。
そしてどうにもならない自分の今。
そこで出会う、才能を発揮している大人になった神成。
その神成に学歴詐称を脅される現実。
っして、ずっと自分の左目に映る、死んだ姉。

死んだ人が見える斎木の、死者とずっと連れだって生きていかなくてはならない苦痛が気持ち悪いぐらいに伝わってきました。

斎木の会社生活、大人生活、全てが等身大で、BL作品にある夢やちょっとアップグレードした非現実世界などはなく、読めば読むほど暗い現実に巻き込まれていく感じを受けました。

でもだからこそ、この作品からは現実の重みとか飾らない愛憎が伝わってくるのだと思います。

前述で「サリエリのよう」と書きましたが、この作品は映画「アマデウス」までに嫉妬と羨望と懺悔を掘り下げて書いていません。

「そこまで書き切れなかった」と著者は記していますが、たしかにこれについては力不足さを感じる部分が、特に後半に入ってありました。
書き切りたいのに、どうしたらいいか……
そんなぐるぐるした葛藤がなんとなく紙面に残っています。

それでも、しっかり書きたいことは伝わってきました。
「サリエリ性格」については完璧じゃない。
中途半端感はある。
それでも、私は満足させていただきました。

読み終わって、未だ私は斎木と神成の恋人としての位置関係が把握できていません。
どちらが上なのか、下なのか。
どういう立ち位置なのか。
どういう恋情なのか。
とくに斎木については彼の神成に対する恋情がなにに派生しているのか。
そのあたりをもう一度理解するために、二度目を読み始めてみます。

そう、この小説は何度も読んで理解を深める大作だな、と思います。

佐田作品、私は個人的にどれも深く難しくて好きです。
独特の描き方や感情の位置づけがあります。

この作品も昨今の読み応えのないBL作品の中で、群を抜く深さがありおススメです。



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